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2011.05.06

「京都の春山に誘われて」

京都に桜の便りがきこえてくると、
そわそわしてしまうのは私だけだろうか。

4月も下旬となれば、洛中の桜はほぼ散ってしまっているが、
洛北の桜たちはまだ咲いていることも多い。

桜の期待とともに、どうしても行ってみたい場所があったので、
先日、私は早朝の新幹線に乗った。

それは洛北のさらに北。高雄という場所にある。


京都駅に到着すると、定宿に荷物を預け身軽となった。
市バスに乗って北へ向かう。

周山街道を走り約1時間後、清滝川のほとり、西明寺の入り口に立っていた。

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西明寺は、神護寺の別院として天長年間(824-834)に創建され、
正応三年(1290)に神護寺より独立した。

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運慶によって作られたという小さい本尊、釈迦如来像が美しかった。

西明寺を出ると、雨が降ってきた。
使いたくなかった傘を開いて、いよいよ目的の古寺へ足を向ける。


西明寺から10分ほど歩くと、山道に着く。

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長い石段をひたすら登っていくと、
突如そびえ立った神護寺の楼門が眼前に姿を見せる。

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私が訪れたい場所は、
この楼門からさらに30分ほど登る必要があった。

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神護寺は、平安京の造宮大夫であった和気清麻呂が開いた寺で、
かの弘法大師空海も真言密教の修験場とした古刹だ。

その和気清麻呂公の御廟もここにある。

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不動明王の石仏も、金堂もすばらしい佇まい。

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が、私が行ってみたい場所はさらにこの上にある。
それなりに登山ともいえる山道をさらに登っていかねばならない。

MERRELLのトレッキングで京都へ来たのは、少々大袈裟だったと思っていたが、
全くそのようなことはなかった。

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こんな雨の日は、普通の靴だと足下が滑ってキツイだろう。

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参道という名の山道を、不安を覚えながら登ることおよそ30分。
突如開けた場所が現れる。

私が訪れたかったのは、時代を変えた荒行の僧、文覚上人の御廟。

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文覚上人は、
この神護寺の再興を強訴したため後白河院によって伊豆に流されたが
同様に伊豆に流されていた源頼朝をたきつけて、ついには平家を滅亡たらしめ、
公家社会から武家社会へと変わるきっかけをつくった人物である。
(『平家物語』)

また、もともとは法皇を護衛する北面の武士で、名は遠藤盛遠といった。
従兄弟の妻、袈裟御前に横恋慕をしたが、誤ってその袈裟御前を殺してしまった
悲劇により、19歳で出家し荒行に身を投じた。
(『源平盛衰記』)

芥川龍之介の『袈裟と盛遠』、
カンヌ国際映画祭でグランプリは受賞した『地獄門』は、
この悲劇をテーマに描いている。

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文覚上人の墓前にしばし手をあわせ、東北地方の復興を祈念して下山する。

次に、15分ほど歩いて、
文覚上人の孫弟子、明恵上人の御廟がある高山寺に立ち寄る。

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明恵上人が暮らしたという石水院は、後鳥羽上皇が学問所として寄贈したもの。
教科書にも載っているあの『鳥獣戯画』は、ここに所蔵されている。

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そして、
この日の最後に立ち寄った場所は、やはり嵯峨野。

広沢池のほとりに立てば、とても心が落ち着く。
そういえば、去年もこの場所で池に映る桜を見た。

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ここにも、遅咲きの桜が私を待っていてくれた。

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いつものように大沢池の周りを歩くと、
その景色のなかで中世に思いを馳せることができる。

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ふと思う、
私は平安、中世の人間の生まれ変わりではあるまいか。

仁和寺には、御室(おむろ)桜が、地面から吹き出すように咲き誇っていた。

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